記憶と軌跡

いつの日か 世界は 共に歩む    番外編・コギー

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

エピローグ   それぞれの戦い  【『コギー』】


青白い光が 部屋をわずかに照らし出す。

そこには 大小様々な機械が 所狭しと置かれている

「ダメね・・・ これで何体目?」

「4体・・・ いいえ、5体目。 やっぱり無理なのかな」

その中心にあるのは 簡素なベッドが一つ

そこに横たわる影が一つ

「そう、ね・・・ いくらデータが残っていたとしても」

「完全なあの子は もう戻ってこない」

ベッド脇の話し声は 以前はガーディアンズだった2人のもの

最近は 任務などする気にはなれずに この部屋に篭っていた

「最初から わかっていたけどね」

「うん。 どんなに似ていても 記憶を持っていても」

「彼女は もう・・・」

言いながら 首から下げたプレートを そっと指で弄ぶ

しばらく沈黙が続き 2人揃って失望混じりのため息をつく

「失敗作、か・・・ ちゃんと処分しないと、ね」

「これが 一番 辛いね・・・」

「もう・・・ やめようか?」


そのとき

外からの光は 遮断されているはずの その部屋に

太陽が出現したかのような 光が溢れた。


「うっ・・・ 何?!」

「眩しい・・・!」

闇に合わせた 2人の視覚が 一瞬遮られる。

そしてすぐに 部屋は暗闇と静けさを取り戻した。

ただその一瞬

その間に さきほどまでと 明らかに違う点が ひとつ・・・

「!! アウク!」

「何? ユイったら大きな声出さないで・・・ あ・・・あぁ!!」

『わ・・・私・・・ 私は・・・』

ベッドに横たわっていたはずの人物が

音も無く 起き上がっていた

「コギー!!」

2人に呼ばれた そのキャストは

未だ 虚ろな目をして ぶつぶつと何かを つぶやいていた。
 

久しぶりに晴れた午後

オープンカフェに 3人のキャストの姿があった。

アウク「ね、知ってる? 最近起きた 空間の歪みによる現象」

ユイ「あぁ 同じ人物が2人存在するっていう アレ?」

アウク「そうそう。 それが、一人や二人じゃないらしいのよ」

ユイ「いったいどういうことなんだろうね?」

アウク「さぁ・・・ でもね、コロニー宿舎でも ある人がそういう状況になった、って」

ユイ「うそ? そんな報告あったっけ?」

アウク「ウワサだからね。 でもその時 正体不明のエネルギーが検知されてたらしいよ」

ユイ「正体不明? なんだろう?」

アウク「あの時・・・再生の時と 同じ時間、同じエネルギーだと思う」

ユイ「あの時・・・一瞬だったね? 何が起こったかわからなかった」

アウク「今ね、そのエネルギーと似た反応が 色んな場所に存在してるみたい」

ユイ「エネルギーの解析は?」

アウク「わからない。 でも誰かがそのエネルギーを『欠片』と」

その言葉に ピクリとする もう一人のキャスト

コギー「『欠片』」

それが キーワードだった。

記憶が溢れ出す。

目の前にいる親友たち

戦うべき相手

そして 一瞬で何もかもを奪った 暗黒の炎。


そこまで話し終えて 目の前の男に視線を戻す。

コギー「その時から わかっていた。 あなたが来ることも」

「今度はイースレイ、か・・・ 一緒に戦った仲間なんだろう?」

コギー「・・・ええ。 どうして彼が 追われることになったのか、わからないけど」

「そうか。 まぁ実際会ってから、だな」

コギー「『欠片』が集まれば 何か大変なことが 起きる気がする」

「心当たりがあるのか?」

コギー「雪華、というビーストが 一つ持ってる。 ナノブラストの能力を増加させてるみたい」

「ほう?」

コギー「彼女も 2人存在していた。 今は1人に戻っているけど」

「その『欠片』とやらの力か」

コギー「力が先か 欠片が先か・・・ 欠片の能力は様々だと思うわ」

「そうか。 んじゃま、その雪華ってのにあってみようか」

よっ、と体を起こして 男が立ち上がる

一瞬身構える。 どうしようもないことだと 頭ではわかっているのだけど。

コギー「・・・彼女をどうするの?」

「どうもしないさ。 俺とお前は『同じ』だからな」

男は あたり前だ とでも言うように一言。

その一言で 覚悟を決める

コギー「そうね。 まかせるしかなさそうね」

そういって 右手を伸ばす。

この手が 男と触れ合えば

私は消えてしまう

『コギー』を吸収した あのときのように。

男も手を伸ばす

コギー「アウク ユイ ごめんね・・・」

黙ってきてしまった 親友2人に小さくつぶやく。

何も説明しなかった ・・・できなかった。

私のオリジナルが この世界に来たとき

運命を知ったから。

目を閉じて 男・・・キュウゾウと名乗った男の手を 待っていた。


キュウゾウ「・・・お前と俺は 同じだけど 違うんだな」

先程とは逆の言葉を 一瞬理解しかねて コギーが目を開く。

キュウゾウ「お前は お前のしたいことをすればいいさ」

手を引いて 腕組みをする。

コギー「え?」

キュウゾウ「今までの話は 聞いたしな。 俺には俺の記憶もあるし」

コギー「でも」

キュウゾウ「戦う力も コイツがある」

腰には ある人物から託された刀。

戦う準備は いつでもできている。

コギー「・・・いいの?」

キュウゾウ「いいも何も。 お前の人生は お前のものだ」

彼女は 信じられない、という顔をしている

キュウゾウ「お前には お前の役割があるだろう?」

今までの話を 聞いてしまったから

コギー「・・・後悔しても 知らないよ?」

彼女は 一人ではないことを 知ったから。

キュウゾウ「後悔しない選択を してるつもりだが?」

彼女に 笑みがこぼれる。

それだけで 俺がこの世界に来た意味はあったと思えた。

 
遠くから 駆けて来る足音がする。

ここ数日 気配を消してずっと見ていた女のものだ。

飽きもせず 毎日同じようなことをしている女。

名を『雪華』というその女は まだ俺に気付いてさえいない。

だが

いつもは俺のいる茂みの前を 風のように通りすぎていくだけのその足音が

今日は数メートル手前で止まった。

気付かれたか?と思った緊張は しかし一瞬で解ける。

こちらに背を向けて 男が『雪華』の前に 立ちふさがっていた。

二言三言 言葉を交わし 突然男が切りかかる。

腕が膨張したように見えたのは 気のせいではなく

『雪華』と同じように 体組織の一部を変化させたからだろう。

とすると あの男もビーストか・・・

それにしても

男の不意打ちなど 見られたもんじゃないな。

そろそろ『雪華』とも 話をしようと思っていた。

俺はゆっくり立ち上がり

2人の前に 姿を現した。

【『コギー』】終
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by sakurayukika | 2008-09-09 15:08
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小説用です
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