記憶と軌跡

いつの日か 世界は 共に歩む    番外編・コギー

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

エピローグ   それぞれの戦い  【『コギー』】


青白い光が 部屋をわずかに照らし出す。

そこには 大小様々な機械が 所狭しと置かれている

「ダメね・・・ これで何体目?」

「4体・・・ いいえ、5体目。 やっぱり無理なのかな」

その中心にあるのは 簡素なベッドが一つ

そこに横たわる影が一つ

「そう、ね・・・ いくらデータが残っていたとしても」

「完全なあの子は もう戻ってこない」

ベッド脇の話し声は 以前はガーディアンズだった2人のもの

最近は 任務などする気にはなれずに この部屋に篭っていた

「最初から わかっていたけどね」

「うん。 どんなに似ていても 記憶を持っていても」

「彼女は もう・・・」

言いながら 首から下げたプレートを そっと指で弄ぶ

しばらく沈黙が続き 2人揃って失望混じりのため息をつく

「失敗作、か・・・ ちゃんと処分しないと、ね」

「これが 一番 辛いね・・・」

「もう・・・ やめようか?」


そのとき

外からの光は 遮断されているはずの その部屋に

太陽が出現したかのような 光が溢れた。


「うっ・・・ 何?!」

「眩しい・・・!」

闇に合わせた 2人の視覚が 一瞬遮られる。

そしてすぐに 部屋は暗闇と静けさを取り戻した。

ただその一瞬

その間に さきほどまでと 明らかに違う点が ひとつ・・・

「!! アウク!」

「何? ユイったら大きな声出さないで・・・ あ・・・あぁ!!」

『わ・・・私・・・ 私は・・・』

ベッドに横たわっていたはずの人物が

音も無く 起き上がっていた

「コギー!!」

2人に呼ばれた そのキャストは

未だ 虚ろな目をして ぶつぶつと何かを つぶやいていた。
 

久しぶりに晴れた午後

オープンカフェに 3人のキャストの姿があった。

アウク「ね、知ってる? 最近起きた 空間の歪みによる現象」

ユイ「あぁ 同じ人物が2人存在するっていう アレ?」

アウク「そうそう。 それが、一人や二人じゃないらしいのよ」

ユイ「いったいどういうことなんだろうね?」

アウク「さぁ・・・ でもね、コロニー宿舎でも ある人がそういう状況になった、って」

ユイ「うそ? そんな報告あったっけ?」

アウク「ウワサだからね。 でもその時 正体不明のエネルギーが検知されてたらしいよ」

ユイ「正体不明? なんだろう?」

アウク「あの時・・・再生の時と 同じ時間、同じエネルギーだと思う」

ユイ「あの時・・・一瞬だったね? 何が起こったかわからなかった」

アウク「今ね、そのエネルギーと似た反応が 色んな場所に存在してるみたい」

ユイ「エネルギーの解析は?」

アウク「わからない。 でも誰かがそのエネルギーを『欠片』と」

その言葉に ピクリとする もう一人のキャスト

コギー「『欠片』」

それが キーワードだった。

記憶が溢れ出す。

目の前にいる親友たち

戦うべき相手

そして 一瞬で何もかもを奪った 暗黒の炎。


そこまで話し終えて 目の前の男に視線を戻す。

コギー「その時から わかっていた。 あなたが来ることも」

「今度はイースレイ、か・・・ 一緒に戦った仲間なんだろう?」

コギー「・・・ええ。 どうして彼が 追われることになったのか、わからないけど」

「そうか。 まぁ実際会ってから、だな」

コギー「『欠片』が集まれば 何か大変なことが 起きる気がする」

「心当たりがあるのか?」

コギー「雪華、というビーストが 一つ持ってる。 ナノブラストの能力を増加させてるみたい」

「ほう?」

コギー「彼女も 2人存在していた。 今は1人に戻っているけど」

「その『欠片』とやらの力か」

コギー「力が先か 欠片が先か・・・ 欠片の能力は様々だと思うわ」

「そうか。 んじゃま、その雪華ってのにあってみようか」

よっ、と体を起こして 男が立ち上がる

一瞬身構える。 どうしようもないことだと 頭ではわかっているのだけど。

コギー「・・・彼女をどうするの?」

「どうもしないさ。 俺とお前は『同じ』だからな」

男は あたり前だ とでも言うように一言。

その一言で 覚悟を決める

コギー「そうね。 まかせるしかなさそうね」

そういって 右手を伸ばす。

この手が 男と触れ合えば

私は消えてしまう

『コギー』を吸収した あのときのように。

男も手を伸ばす

コギー「アウク ユイ ごめんね・・・」

黙ってきてしまった 親友2人に小さくつぶやく。

何も説明しなかった ・・・できなかった。

私のオリジナルが この世界に来たとき

運命を知ったから。

目を閉じて 男・・・キュウゾウと名乗った男の手を 待っていた。


キュウゾウ「・・・お前と俺は 同じだけど 違うんだな」

先程とは逆の言葉を 一瞬理解しかねて コギーが目を開く。

キュウゾウ「お前は お前のしたいことをすればいいさ」

手を引いて 腕組みをする。

コギー「え?」

キュウゾウ「今までの話は 聞いたしな。 俺には俺の記憶もあるし」

コギー「でも」

キュウゾウ「戦う力も コイツがある」

腰には ある人物から託された刀。

戦う準備は いつでもできている。

コギー「・・・いいの?」

キュウゾウ「いいも何も。 お前の人生は お前のものだ」

彼女は 信じられない、という顔をしている

キュウゾウ「お前には お前の役割があるだろう?」

今までの話を 聞いてしまったから

コギー「・・・後悔しても 知らないよ?」

彼女は 一人ではないことを 知ったから。

キュウゾウ「後悔しない選択を してるつもりだが?」

彼女に 笑みがこぼれる。

それだけで 俺がこの世界に来た意味はあったと思えた。

 
遠くから 駆けて来る足音がする。

ここ数日 気配を消してずっと見ていた女のものだ。

飽きもせず 毎日同じようなことをしている女。

名を『雪華』というその女は まだ俺に気付いてさえいない。

だが

いつもは俺のいる茂みの前を 風のように通りすぎていくだけのその足音が

今日は数メートル手前で止まった。

気付かれたか?と思った緊張は しかし一瞬で解ける。

こちらに背を向けて 男が『雪華』の前に 立ちふさがっていた。

二言三言 言葉を交わし 突然男が切りかかる。

腕が膨張したように見えたのは 気のせいではなく

『雪華』と同じように 体組織の一部を変化させたからだろう。

とすると あの男もビーストか・・・

それにしても

男の不意打ちなど 見られたもんじゃないな。

そろそろ『雪華』とも 話をしようと思っていた。

俺はゆっくり立ち上がり

2人の前に 姿を現した。

【『コギー』】終
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# by sakurayukika | 2008-09-09 15:08

いつの日か 世界は 共に歩む    番外編・雪華

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

エピローグ   それぞれの戦い  【『雪華』】


・・・暗い

ここは、どこ?

『桜が キレイだな』

突然 声が頭に響く

桜って 何?

『あの星座 何だ?』

星なんて 見えない

『この前みた映画 DVDになったぞ』

この前・・・ この前っていつ?

声の主の姿を探す

・・・誰もいない・・・


記憶は断片的で

断片的なものも 意味がわからない

「誰か・・・」

声は 虚しく

「お願い」

どこまでも続く 闇のなかに

「助けて・・・」

消えていくばかり

「・・・寒い」

自分を抱きしめた腕に 冷たい雫

「うっ・・・ うぅ・・・」

わからない

どうして こんな場所にいるのか

どうして 何も思い出せないのか

自分が 誰なのかさえ・・・


伊織「なっ!?」

雪華「まぶし・・・」


声は 突然聞こえた

男の声には なぜか聞き覚えがあった

女の声は・・・

どうして

どうして アタシがいるはずの場所に

アタシに そっくりな女がいるの?


何かが 自分の中で 音を立てて 弾けた

「相変わらず 単純だね」

言葉は 勝手に出た

アタシは この女を知っている

ワガママで 自分に甘くて

一人じゃなんにもできないクセに

強情で 自分勝手で

そう

アタシ・・・

―虫唾が走る―

思ったときには

持っていた剣で

女を貫いていた。

「アンタさ 現実キライなんでしょ? アタシがもらっちゃってもいい?」

わかってる

この女が アタシを創った。

この女が死ねば

アタシも消えるかもしれない

でも・・・ それでもいいと思った

「そのまま寝てなよw アンタがしたくて出来ないこと 全部やってあげるからさ」

自分の情けない姿というのは

これほど 腹が立って

これほど 悲しいものなのか・・・

男が 武器をかざして 襲い掛かってきた

男・・・ 伊織にとって アタシは敵なのね

「アハハハハ 伊織カッコイイねぇ 今度からアタシも守ってよw

 そこに転がってるのより よっぽどマシだと思うよ?」

自虐的になる

抵抗しない雪華に さらに腹が立つ・・・

―泣きそうになる

いざというとき 守ってもらうばかりの自分。

伊織を気絶させた。

少し 黙っててもらう

「ツマンナイの もうちょっと楽しめるかと思ったのに

 やっぱりアンタって 一人じゃなにもできないんだね。

 でもキモチわかるよ?

 期待されて出来ないよりも 最初から出来ないって思われておけば 楽だもんね?

 だから自分でも言うし すぐ誰かに頼るんでショ?」

雪華は 動かない

唇が 微かに震えただけ・・・

―泣きそうになる

「マァいいや。 アタシも自由になれたんだしw

 そうそう アタシを創ってくれたこと そこだけはカンシャw」

伊織の腕から リストバンドを外して 落とす

アタシを 探して

アタシを 倒して

やればできるってこと

アタシに 教えて。

―泣きそうになる

アタシは どうして存在しているの?



『雪華 いくよ!』

雪華「待ってw ちょっとくらい休ませてよ~」

『甘い、甘い、甘い! ほら、次は足!』

雪華「鬼ぃぃぃ」

言いつつも 雪華が足に集中するのがわかる

全身を変化させるのは 体に負担が大きすぎる

ナノブラストしたまま気絶などすれば 欠片はすぐ奪われてしまうだろう

結局は 雪華の意思が 体を支配しているのだから。

そこで2人で出した結論が 『少しずつ慣らしていく』だった。

最初は加減がわからなくて

毛深くなっただけ、とか 逆にどうやって戻るの、とか いろいろあったけど。

そうしているうちに 一部分だけナノブラスト強化、ということもできるようになった。

雪華「はぁ はぁ はぁ・・・ でもさ、これって やっぱりヘンだよ~」

全身の3分の2が足という アンバランスな形になって。

『つべこべ言わない。 ほら、そのまま あの木までダッシュ!』

雪華「あの木って・・・ まるっきり山1個むこうじゃない!w」

『何のために ハーフブラストしてんの? 俊敏性と移動力あがってるから余裕よ』

雪華「じゃああの木まで行ったら交代! 次ゆきのテク練習!」

どういうわけか 雪華が明確に交代の意思を持てば アタシも肉体を支配できた

そしてお互いに 得手不得手があることもわかった

『えぇ~・・・ こないだゾンデレベル上がったとこじゃん』

雪華「なんでわざわざ ゾアルに雷落としたの?w」

『う・・・ だって切り替えが上手くいかなくって』

雪華「ね? 苦手は克服しないとねw」

『わかったよ、じゃあとりあえず あの木まで』

雪華「まかせといて!」

一度ぴょんと飛び上がって 体勢を低くして走る

風が気持ちいい・・・

雪華が アタシにも感じられるように 感覚を共有してくれてるのがわかる

アタシは いつ消えてしまうともわからないけど

少しでも長く こうしてアンタといられたら・・・

目を閉じて らしくないことを思う。

このまま 時が 止まってしまえばいいのに・・・


風が突然止んだ。

いくらなんでも 到着には早すぎだけど・・・

「君が 雪華? 変わったことをしているね?」

目の前には ビーストの男が立っていた

「最近 この辺りで 欠片をみなかったか?」

『欠片』のことを 知っている・・・!

緊張したアタシに対して 雪華は平静だった。

雪華「さぁ? 欠片って何のことですか?」

こういうときは 雪華のほうが うまく回避できる・・・

アタシたちは まだ不完全だから。

そう思った矢先

雪華が 急に後ろに飛びのいた

男が伸ばした手の先に 黒い刃の 懐刀が握られていた

「いい反応だ。 それも欠片の力だね」

雪華「・・・あなた 誰です?」

「あぁ 失礼。 僕はベイダー。 女性に手荒なことはしたくないんだけどな」

黒い刃を揺らしながら 値踏みするように見る。

『雪華・・・ どうする?』

冷たい汗が 背中をつたう・・・

そのとき

すぐ近くに もうひとりいたことに

その場の誰も 気付くことはなかった。


【『雪華』】終
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# by sakurayukika | 2008-05-09 00:59

いつの日か 世界は 共に歩む   act.10  いつか・・・

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

act:10   いつか・・・


コギー「! この声・・・まさか!!」

突然聞こえた声に 驚いて絶句する・・・ 

声は 空いたままの亀裂から聞こえていた

『お久しぶりです、コギーさん。 その節はどうも』

伊織「あれ、シンシアさん まだ用が」

シンシア「大有りです。 貴方には次に行ってもらいますよ」

言いかけた伊織さんの言葉を 予想していたように遮って。

シンシア「雪さん。 想う、という気持ちは 何より強いのです」

雪華「シンシアさん・・・ 本当に、シンシアさんなの?」

コギー「いいえ、そんなわけない! だってあのとき・・・!」

コギーちゃんが取り乱すように言う。

シンシア「ええ。 私も そして貴女も」

キャストであるコギーちゃんの顔が 青ざめたように見える。

シンシア「安心してください。 今手をだすつもりはありませんよ」

そう聞くと 今度はカッとした顔で 亀裂を睨みつける・・・

伊織「・・・俺はシンシアさんに助けてもらったんだ」

雪華「ずっとどこにいたの?」

伊織「空間の狭間に。 『雪華』が俺を連れ去ったとき 空間移動に失敗したんだろうな」

『重量オーバーだったみたい。 重いんだもん、落っことしちゃったのよ』

『雪華』の 拗ねたような声が響く。

伊織「ある時、目の前にデカい木があって 誰かと会ったんだが・・・その時に思い出した」

私を見て 私の腕を 落としていったリストバンドを見る

伊織「桜の 記憶を」

シンシア「困っていたので 私と取引したのですよ」

その言葉に はっとして言う

伊織「あー、そうだそうだ。 雪のとこに連れていくかわりに なんか言うことを聞けとか」

シンシア「そういうことです。 さぁ行きますよ」

伊織「いや待て待てw 早いだろw」

シンシア「貴方に休息なんてありませんよ」

亀裂から 光の帯のようなものが伸びて 伊織さんを捕らえた。

雪華「ちょw シンシアさんってば!」

コギー「待ちなさい!」

鋭く呼びかける

対して

シンシア「先ほども言いましたが 今は 貴女と争う時ではありません。 それに」

台本でも読んでいるように 落ち着いた声

シンシア「調べてみてください。 今は雪さんから 欠片の反応はないでしょう?」

すぐにコギーちゃんが 通信機に手を当てる

伊織「俺 どこに連れて行かれるんだ?」

シンシア「それは秘密です。 雪さん、貴女もこれからのことに備えないといけない」

雪華「これから・・・ どういうこと?」

シンシア「まず、その能力。 『雪華』に乗っ取られる形ではなく 自分の意思で発現を」

コギー「危険よ! 失敗したらただではすまないことに」

シンシア「でも必要でしょう。 欠片を持っている限り、狙われるのです」

コギー「欠片の反応・・・確かに無いわね? どうして?」

シンシア「『雪華』がもっているからです。 だから」

コギー「『雪華』が現れなければ 欠片も感知できない・・・?」

何かに気付いて 伏し目がちに考え込む。

今まで そんな事例はない・・・

伊織「ナノブラストしてる時は 雪だけど雪じゃない、って言ってたな」

シンシア「そうです。 ナノブラスト中は センサーに掛かるでしょう」

雪華「でも・・・ しなきゃいけないときがくる?」

結局意味がわからないまま。

不安だけが 頭を掠める。

シンシア「・・・意思、ですよ。 貴女の強さは。 でも、誰かといると甘えてしまうでしょう?」

反論なんて できるはずがなかった

この世界に来る前から 私はシンシアさんに 頼りっぱなしだったのだから。

シンシア「乗り越えたら その能力を使いこなせたら ある男を倒せるかもしれない」

コギー「・・・ナノブラストの使い手」

シンシア「さすがコギーさん。 雪さんは、彼を止めるのに適任だと思いませんか?」

コギー「どうして? あなたは 何を企んでいるの?」

シンシア「答えなど、わかっているでしょう?」

楽しそうにも聞こえる声は 「内緒です」と続けた。

雪華「その人も 欠片を狙っているの?」

シンシア「ええ。 良からぬことを企んでいる人も 逆にそれを止めようとしている人も

      ・・・コギーさんのように 貴女のことを思って、欠片を渡せと言う人もいます」

コギーちゃんが 困った顔をする

コギー「雪ちゃんが持っていたいというなら 無理には奪えないけどね」

伊織「コギーさん! 雪頼んでいいか?」

いつの間にか 亀裂のギリギリまで引き寄せられた 伊織さんが叫ぶ

シンシア「だ・か・ら。 伊藤さんは何度言ったらわかるんですか?」

困ったような声に 少しだけ怒りを交えて言ったその言葉が

なんだか珍しくて 伊織さんが怒られた子供みたいに見えて

こんな状況なのに 少し 笑ってしまった。

雪華「大丈夫よ まかせて! 次に会うときは 私のが強くなってたりして!」

その言葉に 少し驚いた顔をして

伊織「そうか。 お前はお前らしく、か」

どこかで聞いた台詞

コギー「いつでも 振り返れば仲間がいる。 雪ちゃんは一人じゃないからね」

ふいに 思い出した

 『意味の無いことなんてない 意味のない言葉なんてない

  つまづいた時に 笑って微笑んで 夢を見て 誰かを好きになって 仲間と歩いていく

  ただ、そこに 私がいたということが 何よりも 重要なのだから』

いつか 桜の下で あるキャストに言った 自分の言葉・・・

シンシア「自分を誇れることは 何よりも証になるんですよ」

コギー「いつもの 元気な雪ちゃんならダイジョウブだね!」

伊織「何かあったら 呼べよ!」

シンシア「・・・伊藤さん」

伊織「スイマセン」

伊織さんの姿が 見えなくなった。

閉じていく亀裂に 声をかける。

雪華「必ず また会えるから! そのときは一緒に 還ろうね」

伊織「もちろん」

雪華「シンシアさんも!」

シンシア「ええ。 そうなったら 良いですね。 いつか・・・」

いつものように はぐらかされた気がしたけれど。

亀裂は 完全に なくなってしまった。

その空間を見つめて 動けないでいた私を

後ろから 優しく抱きしめて コギーちゃんがつぶやく。

コギー「雪ちゃん。 私もそろそろ行くからね?」

雪華「うん、ありがとうね。 コギーちゃんも頑張って!」

コギー「うん・・・ あのね、私は 次会うときはきっと、違うけど・・・ 同じだから!」

雪華「?」

コギー「会ったらきっと、わかるよ。 彼も・・・」

抱きしめる手に 一度ぎゅっと力を込めて

ゆっくりと離れた コギーちゃんを振り返ると

俯いていた顔を ぱっと上げて 笑った。

コギー「またね! さ~、お仕事お仕事♪」

大袈裟に 手を振る。

そうしないと 別れられないとででもいうように。

負けないように 手を振る。

雪華「またね! 私もがんばるから! また会おうね!」

コギー「もっちろん♪ あ、今度剛掌派を伝授してあげるね~♪」

雪華「それ!w 楽しみにしてるw」

コギーちゃんが 走り出した。

コギー「雪ちゃ~ん♪ モエモエだよ~・・・」

遠くなる背中

雪華「コラw ヘンなこと叫ばない!w」

聞こえたかどうか 分からない声

雪華「コギーちゃん ありがとう」

完全に姿が見えなくなって つぶやいた。

どこに行こうか 考えながら

今までのことを 思い出す。

手探りでも歩いてきたから いろんな人に出会えた

迷っても諦めないなら これからも道は開けるだろう

自分の中にある存在が 声をかけてきた

『雪華 みてみなよ』

いつの間にか みていた地面

顔をあげる

支天閣からは

遠くの山々 高い空 霞む景色

これから歩くだろう道が

どこまでも 続いていた。

【Fin】
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# by sakurayukika | 2008-05-05 13:57

いつの日か 世界は 共に歩む   act:9   誓い

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

act:9   誓い


視界が一変した。

高い場所から みんなを見下ろしている。

そして景色が ノイズのようにブレて

一瞬の後に

『コギー』の持っていた 光の欠片が

あたたかな温度を持って

私の右手に 握られていた。

『なっ・・・?!』

伊織さんと 『コギー』が

信じられないといった表情をみせているのに対して

コギー「雪ちゃん どうやったの?

観察でもするように

何でも見透かしそうな目で コギーちゃんが見つめる・・・

誰かが 勝手に答える。

『別に? 願っただけよ?』

コギー「あなたは・・・ 雪ちゃんじゃないわね? 雪華」

私が 私じゃない?

『・・・アンタこそ 一体何?』

コギー「そうね。 話してあげる。 その前に・・・」

振り向きざま 『コギー』に向かって右手を伸ばす。

足元に 円陣が現れる・・・ 『雪華』が捕まったのと同じものにみえた。

「しまっ・・・!!」

『コギー』が慌てたときには すでに手遅れだった

ゆっくりとコギーちゃんが近づく。

「イヤよ・・・ こないで! 私ハ」

コギー「欠片がなければ あなたは私には勝てない。 わかってるでしょ?」

「私ハ・・・ イヤ・・・ 消えたくナイ・・・」

コギー「さよなら 『コギー』」

コギーちゃんが 円陣の支柱の1本に 手を触れた瞬間

2人の輪郭がぶれて

一瞬こちらをみた『コギー』は

泣いているようだった・・・

そしてすぐに 輪郭が戻る

コギーちゃんは 一人になった。

コギー「ふう・・・ まったく 面倒なんだから」

伊織「一体 どうなってるんだ?」

まだ呆然としたままつぶやく。

コギー「そういえば 伊藤さんにも聞くことがあるね」

伊織「あれは・・・ 雪なのか?」

こちらを怪訝そうに見る・・・

コギー「あれは 雪ちゃんだけど 雪ちゃんじゃないよ」

伊織「どういう意味だ?」

『アタシは 消えなかった』

また 声が響いた。

さっき 頭の中で聞こえた『雪華』の声

私はさっきと逆に 『雪華』に取り込まれてしまったの?

コギー「『雪華』が雪ちゃんの中に残ったと聞いて もしかしてと思ったの」

伊織「ナノブラスト、したんだな・・・」

コギー「そう。 リアルから引き込まれた人には 簡単にできるもんじゃない」

『アタシだから できたんだけどね』

雪華「入れ替わった、ってこと?」

返事は 静かに響いた『雪華』の声だけ

 『できるかどうかは 賭けだったけどね』

コギーちゃんやイオリさんには 私の声が聞こえていないようだ。

コギー「そうなる前に 欠片を渡して欲しかったんだけどね」

伊織「欠片、か・・・ どうしてそれがいる?」

コギー「イーさんが それを持ってる人を無差別に襲ってるの。 雪ちゃんが危ないでしょ?」

『この欠片に力がある、と言ったのは アンタだっけね?』

コギー「そうね」

欠片をもう一度見ようとしたけど 私の視界は 動かない。

『ナノブラストのことといい・・・ 何を知ってるの?』

コギー「私はね ちょっとだけ、雪ちゃんより長くココにいる。 それだけよ?」

『タイミング良すぎンのよね。 それに、いつからコギーは偽者だった?』

コギー「オウトクシティで。 ある機関にあなたのことを報告してたら 別件で忙しくなったの

     まさか、偽者に連れて行かれるとは 思ってなかったけどね」

『それから監視してた?』

コギー「・・・そうね。 いつイースレイが現れるかもわからなかったし」

『で、うまくいけば 欠片も手に入ると』

コギー「・・・大人しく渡してはくれなさそうね?」

『アタシたちが持っていたら 問題でも?』

コギー「欠片の持ち主は すでに何人か殺されて奪われたわ」

『あんたたちの機関がそれを集めたとして そこ狙われたらヤバいんじゃない?』

コギー「ガーディアンズの中でも 優秀で才能ある者を内密に集めた機関よ。

     悪いけど、あなたや雪ちゃんが持っているより 安全よ」

『・・・試してみる?』

背筋に 逆立つような感覚を覚えて

体が勝手に 身震いする・・・!

雪華「ちょっと 待って!

見えない自分の腕を 思わず精一杯突き出す。

そして また 世界が揺れた。

体が熱くなって 軋むような音が聞こえた気がして

私は 私に 戻った。

伊織「雪!」

激痛でうずくまった私を 伊織さんが抱きしめるように 支えてくれる。

雪華「コギーちゃん・・・」

コギー「ナノブラストは 肉体に極度の負担をかけるの。 ・・・あんまり無理しないでね」

雪華「この欠片に どんな力があるとか、そんなの関係ないよ」

伊織さんの手を借りて 立ち上がり、見つめる。

雪華「私が現実から持ち込んだなら 私が持つ意味があるはず・・・」

コギー「・・・本当は ちゃんと解っていないのは確かだよ」

瞳が 迷うように揺れる

コギー「でも、イーさんが狙ってるのも、確かなこと・・・それでも?」

雪華「それでも。 私は弱いけれど 守ってみせる」

決意を込めて 断言する。

どこからか力が 溢れてくるような気がする。

誰かの声が 聞こえる。

『きっと出来ると 信じていなさい』

【to be continued】
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# by sakurayukika | 2008-05-05 13:39

いつの日か 世界は 共に歩む   act:8   召喚

・ いつの日か 世界は 共に歩む    ゆき編 ・

act:8   召喚


「ふふ こんな簡単なことだったナンてね これデ私が・・・!」

コギーちゃんが 私の手首を掴んだ その時

右側から伸びてきた鞭が 彼女の手首に巻きつき

驚いている私の 左の空間に わずかに亀裂が入る・・・

鞭の先には

・・・コギーちゃん?!

コギー「そこまでよ、ご苦労さま。 あなたの役目は 終わりよ」

「フン やっぱり来たネ・・・ でも手遅レよ!」

予想していたのか その表情に驚きはない。

鞭で捕らわれていない もう片方の手で 私からリストバンドを奪い

そこから 『欠片』を取り出そうとしている。

それを鞭で押さえつつ コギーちゃんが 私に近づいて来て 言う

コギー「最初にこの世界に来たとき 雪ちゃんが持ち込んだ 現実の欠片」

魔道具で 回復しつつ 教えてくれる

コギー「記憶の欠片が 具現化するのは 本当に稀なことなの」

左の亀裂が 少しずつ大きくなるのを警戒しつつ

コギー「だからこそ 価値が 力がある。 だから イーさんは・・・」

暗い表情を見せて 口ごもる。

その隙をついて ゲーム世界の『コギー』が

鞭を振りほどき 『欠片』を取り出した。

その時

亀裂が 光を増して

大柄な男性が 飛び出してきた!

その勢いのまま 『コギー』に 切りかかる。

伊織「それを 返せ!」

雪華「イオリさん!!」

コギー「伊藤さん!! どこから・・・」

いつもの斧を手に 伊織さんが叫び返す。

伊織「おう 待たせたな! 感動の再会はまたあとでな!」

振り向きもせず言う その背中が

なんだかすごく 懐かしい・・・

雪華「バカバカバカ! 何してたのよ!!」

コギー「あ、伊藤さん 雪ちゃん泣かせた~ あとで剛掌派ね! マッタク」

ほっとした表情で コギーちゃんがクスリと笑った。

伊織「お前ら・・・ せっかくいいところだろうがぁぁw」

コギーちゃんが 鞭とテクニックで 逃がさないように挟み打ち

そこに伊織さんが 斧を何度も振り下ろす。

『コギー』を壁際に 追い詰めていく・・・

追い詰められた 『コギー』の表情に 焦りが現れる

絶え間ない攻撃に 『欠片』を手にしたまま 動きが取れないでいるのだ

そのとき 私を呼ぶ声が

頭の中で響いた

『雪華』

雪華『・・・誰?』

聞こえた声に テレパシーのように 頭の中で返事をする。

『アタシよ、雪華。 アタシはどうなったの・・・?』

それは 不思議な感覚だった

コギーちゃんに治してもらった体は まだぎこちないけれど 私の思うように動く。

ただ

もう一人 頭の中に 住み着いているような・・・

雪華「コギーちゃん 2人の人間が1人に戻ると 取り込まれたほうはどうなるの?」

コギー「どうって・・・ 記憶は元に戻って 人格は、残ったほうのものでしょ?」

雪華「『雪華』が 私の頭の中で 話しかけてくるの」

コギー「なんですって? そんな・・・スイ・モアは そんなこと言ってなかったわ?」

思わず攻撃の手を止めて コギーちゃんが何か続けようとしたのだが

『雪華 話はあとよ! さっきの欠片 あれを取り戻しなさい!』

はっとして『コギー』を見る。

攻防に変化は見られないが 伊織さんが攻めあぐねているような・・・

伊織「くっそ、のらりくらりと!」

コギー「伊藤さん 情けない!」

コギーちゃんが ツインハンドガンを取り出すものの。

伊織「だがケガをさせても コギーさんが・・・」

コギー「治せばいいだけよ! でも・・・」

絶え間なく動く2人に 狙いを定められない

『欠片さえ・・・!』

『雪華』の 悔しそうな声が聞こえる

雪華「私は また何も出来ないのかな? アレは 私のなのに」

『そうよ アンタが・・・ アタシがやらなきゃ・・・!』

『雪華』の強い意思が 私の中で 熱く燃えた気がした。

そうだ

私が 何とかしなきゃ・・・

『アタシたちなら きっとできる』

その一言に はっとする。

私・・・たち?

そっか。

私には また心強い仲間が できたんだ・・・!

雪華「私たちなら きっと・・・」

『じゃあ いくよ?』

・・・何?

突然

襟首を ぐいっと後ろに引かれたような感覚

そして 体の中心が 熱くなるのを感じる・・・!

【to be continued】
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# by sakurayukika | 2008-01-20 19:11


小説用です
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